我が家の次男たろ(19)。
実はこの年齢までスマホを持っていなかった。
持たせていなかった訳ではなく、本人が必要ないと言い続けてきたからだ。
しかしついに、自立の道を進み始めたたろは、社会に出るためには自分の電話番号があらゆる場面で必要になることを実感し、いよいよスマホデビューすることに決めた。
携帯ショップへ行く前日の夜、たろは一睡もしないで、紙に名前と住所を書き続けた。
戦地に挑む不安と緊張を紛らわすために。
寝不足でコンディションが最悪な状態で、十分な力を発揮して戦えるのか心配になったが、たろの覚悟は決まっていた。
たろは言う。
「精神やられたら2年は動かれへんなるで」
数年前に起きた、たろの地獄の始まりとなったあの出来事が蘇り、私は青ざめた。
どうか、無事に帰って来れますように…。
戦地に到着し、すぐに番号が呼ばれた。
もう引き下がれない。
戦いが始まった。
たろがかなり緊張していたのが私には伝わっていたが、冷静沈着な振る舞いで対応していた。
だが途中から何故か、よく分からない理由で新しいスマホの設定にエラーが出てしまい、手続きが進まなくなった。
それでも何度もトライして設定をするたろだったが、顔は真っ赤になり、静かながらも頭の中はパニックを起こしていた。
『蛍の光』が店内に流れ始めた。
閉店時間が近づき、ますます焦るたろ。
言われた通り正確にやっているのに、どうしてもエラーが出てしまう。
もう2時間も戦ってる。
あぁ、もうダメだ。
たろは戦地で大きな傷を負い、完全に負傷したと私は思った。
こりゃ数年、療養生活(引きこもり)になるなと…
絶望する母の横で、たろは最後まで諦めず、戦い続けた。
そして、ついに…

マイ・スマホをゲットして、無事に家に帰って来ることができた。
しかもたろは、無傷だった。
たろは言う。
「心理学のお陰やな」
戦地で心理学という武器を持って実戦し、最後まで戦い抜いたたろの顔が、また少し大人になり、頼もしくなった気がした。
おわり🤗


